この会社を選んだのは、今後ドラッグストアの役割がさらに大きくなると考えたから。

この店に移って半年ほどが過ぎましたが、その慌ただしさにようやく慣れてきたところです。この店は駅の構内にあることもあって、前にいた店の3倍以上のお客様がお見えになるんです。急に頭が痛くなった、下痢になった、など、急性の病気のお客様が多いことも、今までとは違うところ。駅で転倒したなどという突発的なトラブルの方も見えるので、瞬時の対応力を必要とされますね。

就職先に、病院や製薬会社ではなく、ドラッグストアを選んだのには、自分なりの考えがありました。これから医療費がますます上がってくると、誰もができる限り病院にかかりたくないと考えるはず。一人ひとりが健康を管理していく上で、ドラッグストアの果たす役割はさらに大きくなるだろうし、それをサポートする薬剤師が絶対に必要になる、と考えたのです。

その中でも、この会社を選んだのは、会社の規模と将来性。これから株式の公開を目指すような規模の会社のほうが、自分の能力、個性を活かす場を多く与えてもらえるだろうと思ったんです。今思うと、ちょっとエラそうですが、当時はすぐにバリバリ仕事ができると思っていたんですよ。

私にとっての「その時」は、配属されたばかりの頃の、経験や挫折の一つひとつです。

とにかく入社直後は、早く一人前になりたいと気負いすぎていたところがありました。気がつくと、薬の説明は、知識に頼って難しい話ばかり。こちらがいくら時間をかけてご説明しても、理解していただけないことが多かったです。お客様の声にもっと耳を傾けなさい、と先輩から注意を受けたこともありました。

薬大を出たのだから薬のことだけをやっていればいいだろう、という勝手な思惑も、すぐに甘いと気づかされました。当たり前のことですが、雑貨だろうと、食品だろうと、お客様から質問があればなんでも答えなければなりません。化粧品のことを聞かれた時など、自分は薬剤師なのにな、と思うこともありました。正直いってはじめのうちは、お客様に声をかけられるのが少し恐かったですね(笑)。

お客様からいただいたお叱りに対して、店を代表してご説明に伺ったこともあります。説明に納得していただけた時には、全身の力がぶわーっと一気に抜けていきました。それくらい緊張していたんです。

お客様と直接関わる仕事だからこそ生まれる、このような経験や挫折は、私にとって大変貴重なものでした。思うようにいかずに悔しい思いをすることもありましたが、薬剤師としての知識や技能はもちろん、人間として幅を広げてくれました。おそらく病院や製薬会社では、なかなかこういう経験はできなかったと思います。ドラッグストアを選んで正解だったな、そう思える理由のひとつですね。

思い描いていた薬剤師に少しずつ近づいていると思います。

最近はお客様の話をよく聞くことに比重を置いています。カゼをひいたとおっしゃるお客様に対して、ただカゼ薬をおすすめするのではなく、どうしてカゼをひいたのかということや、どんなケアをされているのかまでじっくり伺うようにしています。そうすることによって、ふさわしいお薬をおすすめできるし、本当の原因が見つかることもあるんです。

説明もできるだけ噛み砕くようにしています。難しい成分や効能の話は、ポイントだけ。普段使っている薬でもこうやって使うと効果が上がりますよとか、今度はこの薬に替えてだんだん薬離れしていきましょう、などとご説明する。そうすると以前と違って、私の話に耳を傾けてくださっていることがわかります。

そんなふうに何度か接客させていただくうちに、そのお客様は薬を使うのがどんどんうまくなっていくんですよ。病気になる前にご自身で予防できるようになるし、ある程度は病院に行く前に対処できるようになります。やはり、最終的にはそこが目標。そのためにも、これからはスタッフと、薬や接客の知識だけではなく、そういう意識も共有していきたいですね。

先輩方にも恵まれていると思います。みなさん、すごく面倒見がいい。でも、1から10まで教えてくれるのでは決してなくて、ここまでできるようになったから次の課題と、見守りつつも力を伸ばすような育て方をしてくれます。私もそういう先輩方のいいところを吸収して、自分がしてもらったことを後輩に受け継いでいきたいです。少しずつですが、自分が思い描いていた薬剤師像に近づいていると思います。